「エレファント・ソング」 2022年5月7日 13時開演
たった3人だけのの出演者。休憩なし、舞台セットの転換すらない、緊張感途切れぬ100分間。正直、観ているこちら側まで最後は糖分🍫を欲してしまうような濃密な会話劇。痺れました。
あらすじ
精神科医のドクター・ジェームス・ローレンスが失踪した。
病院院長のグリーンバーグは、ローレンスが失踪前最後に診た患者マイケルに事情を聞くためにローレンスの診察室を訪れる。
病院の看護師ピーターソンは言う「マイケルは普通とはちょっと違います。見くびらない方がいいですよ。弄ばれますよ」。
マイケルは初めから普通ではなかった。まるで関係のない「象」についての話から始まり、つかみどころのない話でグリーンバーグを翻弄する。しかし、ローレンスが姿を消した事情は知っているらしく、その真実を教える取引を持ちかけてくる。
条件1、ミス・ピーターソンには、この件に一切介入させないこと。
条件2、自分の患者カルテを読まないこと。
条件3、真実を話したご褒美にチョコレートをくれること。
そうして始まったマイケルとの対話。それはマイケルの仕掛けた巧妙なゲームだった。マイケルはローレンスの失踪の真実を知っているのか。度々脱線する象にまつわる話は何を意味するのか。
ゲームには悲しく衝撃的な結末が用意されていた。
エレファント・ソング | PARCO STAGE -パルコステージ-
何が本当なの??院長のグリーンバーグ先生(寺脇康文)は信用できるの??何か裏があるんじゃない??とハラハラしながら夢中でみてたけど、途中からマイケル(井之脇海)が本当に寂しそうで寂しそうで。クリスマスという特別な日に像のぬいぐるみのアンソニーをぎゅっと抱えて。グリーンバーグ先生や看護師のミス・ピーターソン(ほりすみこ)を試すような素振りをしながらも、救いを求めているような。そんな目で見ないでと声に出してしまいそうな瞳でまっすぐ見つめてくる。何より、物理的に177、8センチの長身である井之脇海さんがほんとに華奢で小さく、子供みたいに見えた。
個人的にうぅぅっとなったのは、オペラ歌手であるマイケルママの死に際の言葉「今日は3音も外してしまった……」。
ちょっと震えた。その言葉を直接聞いて看取ったマイケルは「ごめんね」でもまぁいい方なんて言ってるのがまた切なくて切なくて。
マイケルママは舞台上には登場せず、あくまでもマイケルの口から語られる存在。それでも、息子がどんなに求めようとアーティスト、オペラ歌手としか生きれない人間の業というか、そんな痛みが伝わってきた。そして、そんな母の愛を一途に求め続けるマイケル。どうやっても交わらない二人が悲しい。よくある”ただ愛されたいだけだった……”みたいなことってこういうことなのかな。なんだかすごく腑に落ちた。
そうなのだ、この愛を一心に求めるマイケルのピュアさが100分間途切れることなく、それはもうとてつもなくて。それを文字通り体現する井之脇海さんがまた凄い。ほんと出ずっぱりで膨大なセリフの量。対峙する寺脇康文さんはTVドラマのイメージが強かったのだけど、まぁめちゃくちゃダンディー。佇まい、セリフの端々から、この人は舞台人なんだ、ということが伝わってきた。
観劇後、パンフレットを買う。出演者が少ないせいか、インタビューも座談会も写真もとても充実していて大満足。
演出の宮田慶子さんのコメントが印象的に残ったので、忘れないように、少し引用させていただく。
新生PARCO劇場で三人芝居はとてもチャレンジングですし、こうした作品に足を運んでくださるお客様はきっといい方に違いないと思っています。
情報解禁のときに私はこの作品を「どこか心の柔らかいところに届けられたら」と書きました。それは今多くの人が、心の柔らかいところがどこなのかわからなくなっていると感じられたから。
PARCO劇場『エレファント・ソング』
— そーこ (@mkrnsouko) 2022年5月7日
3人だけの出演者、休憩なしの100分間の会話劇。観ているこちらまで糖分🍫が欲しくなるような集中力が必要な作品。
凄かったな、観れて良かったな👏
アーティストとしてしか生きれなかった母🎙と母の愛情を一途に求め続けた息子の姿が切なくて切なくて😣 pic.twitter.com/18ct7vdk8z