旬感ブログ

好きなこと&旬な気持ちをメモ代わりに

アフター・ヤン

好みでいえば大好き。

見てるときから好きだったし、後から振り返っても好きな映画。

 

まず、冒頭のダンスシーンがいい。

人と構造物(とインテリア)の構成がいい。

音楽がいい。

そして、さりげないSFの描写が秀逸。

 

映画を見た直後に思った感想は、「ごちゃごちゃしていない映画っていいな」だった。

なんかこう、すっすっすっとパズルが正しい位置に収まっていき、気づいたら心が整っている感じ。

その心の平穏は普段の生活でも得られるけど、ここまでピタッと整う感じはなかなか得難いもの。

 

そんなノイズのない平和な心で、未来の世界を眺め、人種やら家族やら……果ては人間とはなんだろうね、なんていう漠然とした何かについて。

思いを巡らせる種が心に蒔かれた感じ。鑑賞中にはそこまで考えてなかったけど、後になってあれは何だったんだろうねって。決してシリアスではなくぼーっと。

公開中にまた観たいな。

 


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さかなのこ

SNSでの評判が良かったので、ふらりと近所の映画館へ。

 

特に子供時代から学生時代までの、ゆるゆるとしたコメディー部分はクスクスクスクスと、かなり笑えたのですが、そういったコメディー的な面白さだけでは片づけられない、実~~~に面白い映画でした。

 

一見すると、好きを伸ばすことは素晴らしいね、凄いね、子供の才能を信じ、それをサポートした家族(主に母親)も偉いね、という話。それがA面だとしたら、その裏側のB面が描かれていたのがとても気に入った。

 

のんさん演じるミー坊(さかなくんがモデルの主人公)は、「魚好き」という、他を圧倒する好きのエネルギーを抱えて生きている。でもそのエネルギーはあまり大きくて。否が応でも周囲の人を巻き込んでいく。その純粋さ、揺るがなさに触れ、友情を育み、誰かの好きをアシストしたり、好影響もたくさんある。

その一方で、好きなもの以外への圧倒的無関心。故に、本人が気にも留めていないところで周囲が困惑したり、悪意なく責任を放棄してしまっていたり、いろいろなことがあったであろうと、容易に想像できる。何かを猛烈に好きでいることは、それ以外を猛烈におざなりにしてしまう。そういった残酷な一面も見せつつ、それでもミー坊のまっすぐすぎるパーソナリティーは魅力的で、関わった人の一部が、「あいつには敵わないな」から、いつしか「あいつの凄さを世界に知ってほしい」に変わる様子は、ややファンタジーであっても、気持ちが良かった。

実際のさかなくんを目の当たりにすると、ファンタジーとも言い切れない、さもありなんという気もするし。という訳で、原作も読んでみたくなり、すぐにポチしました。

 

正直、映画を見た直後の感想は、「好きなものがあるっていいね」というよりは、普通の人が当たり前のようにできる、好きを手放すことができない人は、さぞ大変だろうなということ。それこそ、ミー坊にとってお魚さんは、ほぼ命と同レベルで、失ったら、どうなってしまうのだろう……。母親があそこまで、ミー坊を支え、味方であり続けたのは、もちろん「愛」でもあるけど、「魚がなくなったら、この子は死んでしまう」というもっと切迫した気持ちだったのではないか?! そう思わずいられない。

だって、井川遥さん演じるお母さんはいつもどこか、気が張り詰めていて、少し困ったような姿が印象的だったから。

 

とにかく子役時代がめーーーっちゃかわいいのと、高校時代がかな~~~り面白くて&演者も豪華で^^

主人公のミー坊を演じたのんさんの演技も抜群によく。だれでも楽しめる作品と思う。

とはいえ、人によっては正直映画館で観なくてもいいかな思う作品かもしれない。

ただ個人的には映画館での鑑賞を強くおススメしたい。というのも、小さな小さな小さなカブトガニの卵がたった2個、巨大なスクリーンいっぱいに映ってる、そんなシーンを見ていたら、こんな映像今まで一度も見たことなかったな……。と、なぜだかとてもとても感動してしまって‼

そこに感動したのは、私だけかもしれないけど、斬新なシーンはたくさん見ることができるはず(笑)という訳でやっぱり、映画館で見ることをオススメしたい^^

 

 

 

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もっと超越した所へ。

10月14日公開予定の『もっと超越した所へ。』

幸運なことにFan’s Voice独占最速試写会にて鑑賞することができました。

 

eiga.com

いや~面白かった^^

あらすじにもあるように、ダメ男を引き寄せる女たちの恋愛模様を描くのですが、そのダメ男のダメっぷりが(笑)友人に軽く「ダメ男だよ~、別れなよ」っていうレベルではない。

特に、菊池風磨さん演じた怜人くんと、オカモトレイジさん演じた泰造は、もう物理的?に倫理的に?うっっわってどん引きするレベルで。それこそ超越したダメ男で、すんげームカつく。なのに、面白くて笑ってしまう。冷静になればなるほど許すまじ案件なのに、笑っちゃう。割とふっつーに胸糞悪いやつなのに、笑っちゃう。もう、どうしてくれよう(笑)そもそもダメ男たち、自分がダメと思ってなさそうだし、悪びれる気持ちもないし。そういうところがダメ男たる所以なんだけど。この2人に限らず男性陣4人の、「ちょ、どの口が言う?」レベルが天井突破してた。

 

そういった、やべー男性を演じた俳優さんが、見事なまでに三者三様で素晴らしく。腹立つ案件を、絶妙にイラつかせながら、滑稽で可笑しく、なんなら時々かわいいなと思わせるように演じてきて。なんか悔しかったよ、私が(笑)それを受け止める女性陣も、さすがダメ男を引き寄せる女たちなだけあって、ちょいちょい「大丈夫そ?」ってなるんだけど。なんだろな、もはや「自らの力で稼ぎ、かつ、生活を成り立たせている」というだけで、とても信頼できてしまう。前田敦子さん演じる真知子が怜人くんにブチ切れるセリフとか、そのものズバリなのでぜひ見て、聞いてほしい。

そこから女性陣が「もっと超越した所へ」へと向かうエネルギーが、これがまたすさまじかったので、そのあたりは、ぜひ劇場で‼

 

こうやって感想を書いていてふと思うのは、結局繰り返してしまうなら、「もっと超越した場所」に向かうのは、意外と悪いことじゃないのかも⁉ってこと。正しさとか、理性をぶっとばしてく謎のポジティブエネルギーがあった。

そして、4組のカップルそれぞれのお芝居の相性がいいのか、皆さん演技が上手なのか、そのどちらもなのか。役者さん8人それぞれもっと好きになれる、そんなポジティブパワーも^^

 

上映後に根本宗子さん(原作・脚本)、山岸聖太さん(監督)を迎えたトークイベントがあり、それまた上映後余韻そのままに、楽しかった。根本さんが「この作品は2015年に書いた作品で、ほんと、全部言ってる。一人一人の胸ぐらをつかみに行ってる」とか、ダメ男たちの挙動に対して「あれ、ほんとムカつきますよね~(笑)」とか楽しそうに話してて。根本さんの舞台も行ってみたいなと。確か、成田凌さんの舞台があったような……‼‼

その場で少し触れられたタイトルの『もっと超越した所へ。』の意味。舞台製作当時、脚本の実力は上がっているが、そのレベルに自分の演出力が追い付てないのではないか。もっと演出力を上げたい、今までの自分ができなかった、やれなかったことをやりたい、という決意のみで決めたもので、脚本の内容から決まったものではなかったそう。こんな大ごとになると思ってなかったので~って恐縮されてた。でも、これが‼結果的にめちゃくちゃ秀逸なタイトル‼

やっぱり、今までの自分を超える『もっと超越した所へ。』というのは、ものすごいエネルギーなのだろう。そのエネルギーこそが、舞台から映画化へ繋がったパワーの源だったのかな。

 


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あなたがここにいてほしい

単なる私の好みなのだけど、この時代(2010年あたりの前後10年間)の中国を舞台とした作品がとても好きだ。Netflixの『僕らの先にある道』とか、正直かなり好きな恋愛映画。

 

急速に豊かになる社会と貧富の差と希望と夢と挫折とみたいな。なんというか心がぎゅっと苦しくなる要素が多くて。もっと豊かになりたくて幸せになりたくて、もがけばもがくほどに、思った未来からは遠ざかっていく切なさ。お金はないけど愛だけはある、二人でいれば幸せだねって思ってたのに、大人になるとそれだけでは生きていけない。

ましてや、急速に発展する国においては誰もが今よりもっといい暮らしができると信じてる。

それはそうとしてこれ、どこまでが実話なんですか?っていう。物語としては楽しめるけど、現実だったらかなりしんどい。っていうか、当時の中国ではこういうことってそこそこあったりしたの?みたいな。冷静になるとなかなかに胸がざわつく。

 

ありがちっちゃありがちなストーリーでも、映像が美しくて、主人公二人の心模様が丁寧に映し出されるから、物語に没入することができる。過去の会話が別の意味を持って立ち上がってくる伏線は、まるでミュージカルでいうリプライズのように感じてしまい、その悲しみに少し高ぶってしまった。

確かに悲しくて辛い結末なのだけど、沈んだ気持ちで映画館を後にしたかと言えば、そんなことはなく。二人の10年が終わったんだなと。

そんなラストに寄り添うエンドロールもまた良くて、静かな余韻が胸に残った。

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帰りの電車でふと思ったこと、徒然に。

この作品の二人は、リュー・チンヤン、リン・イーヤオってお互いにフルネームで呼び合うんですね。私がドラマや映画を見た限りだけど、中国ではフルネームで呼び合うことってかなり多そう。韓国もわりとそのイメージがある。もしも日本の恋人同士がフルネームで呼び合う文化だったら夫婦別姓・同姓の捉え方ってどうなってたんだろうな。

愛しい人の「呼び名」ってそれそのものに愛が詰まってると思うから、氏名が変わるということを一人のことではなくて、二人ごととして共有できる気がする。

だからどうしたという話なんだけど。

日本では恋人に限らず、親しい関係だと、割と下の名前だけで呼び合うことが多いから、本人以外の人間が、苗字が変わったということを実感する瞬間ってなかなかないなって。

 

 
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流浪の月

原作を読んだ時は、こんな関係を描けるんだ‼という驚きと同時に、こういう”あり得ない関係”を描くということは、ことの顛末を眺めている読者に理解はできる(共感はできずとも)。ただ、物語の登場人物だたちからしたら、到底納得できないよな~なんて思った。そして、何より小説としてとても面白く読んだことを覚えている。

 

映画自体は150分の大作。長い作品は苦手なので、正直、どうなんだろうって思ったが、俳優陣の熱演もあり、あっという間だった。これ以上長くするのは難しいけど、原作を読んでいる身としては、もっと更紗と文の過去(主に家庭環境)*1がわかるシーンがあるとよかったかな~なんて。

 

普段、原作と映画を比べるような見方はしないのだけども、読後、鑑賞後の印象が似ているようで少し違ってなかなか興味深かった。この作品、不思議なことに、原作も映画も終わった後に、ふと音楽が頭に浮かんだのだ。

 

原作では、浜崎あゆみ『appears』

恋人達は とても幸せそうに

手をつないで歩いているからね

まるで全てのことが 上手く

いってるかのように 見えるよね

真実はふたりしか知らない

おそらく、二人だけの描写が映画よりも多かったのだろう。なんだか、文と更紗の”二人にしかわからない二人だけの世界”。二人の世界に逃げ込むような、二人でいるということに重きが置かれている印象だった。

 

一方、映画を観た後は、中島美嘉『ORION』

泣いたのは僕だった

弱さを見せないことが そう

強い訳じゃないって君が

言っていたからだよ

曲全体のイメージとは違うのだけど、誰もが心で泣いていて、我慢していて、そのことが、『泣いたのは僕だった』というフレーズを想起させたのかな。

驚くほど誰もが幸せじゃなさそうで、つらかった。映像にするとこうも陰湿で、じとっとして、極端な言い方すると二人の共依存ぽさが滲み出る。恐らく、原作では文と更紗を通して世界が描かれているのに対し、映像では、それぞれの登場人物がそれこそリアルに存在しているので、自ずとそうなったのかも。あとは、もう、実力のある俳優さんが皆して死んだ目をして演じているので、食らってしまうっていう。

 

中でも、更紗を演じた広瀬すずさんは、演技力はもちろん、青春映画で見せた瑞々しい笑顔が印象的だったので、こんなに幸せじゃなさそうに笑う姿を見るのがほんとにつらくて。いや、演技なんだけど(笑)それでも、なんかショックで😢早く次回作で元気なすずちゃんが見たいよ‼

そういう意味では、がりっがりかりっかりに痩せてた桃季くんもそう。早く元気な姿が見たい。とまぁ、こちらの心が抉られるほどの熱演で、月並みだけど松坂桃李広瀬すず横浜流星はやっぱりすごい。難しい作品だけどこのメンバーなら絶対いいよねって思ってたら、いやもう予想以上に演じてくれて、スタンディングオベーションです👏

 

映像は綺麗だし、遅ればせながらも映画館で見ることができてよかったな。久しぶりに心がぎゅってなりました。

 


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*1:更紗の最初の家族、パパとママに愛されて夕飯にアイスを食べたり自由に暮らしていた頃。ジャンクフードの一切を与えず、規則正しい生活だけを正とした母に育たられた文。この辺りの描写がはっきりすると、文がピザを食べるシーンや、アイスを夕飯に食べるシーンの意味合いがよりわかるかな~、なんて。それくらい映像で察しなさいってことかもしれないけど。正直、皆わかるの?って思った(笑)