あなたがここにいてほしい
単なる私の好みなのだけど、この時代(2010年あたりの前後10年間)の中国を舞台とした作品がとても好きだ。Netflixの『僕らの先にある道』とか、正直かなり好きな恋愛映画。
急速に豊かになる社会と貧富の差と希望と夢と挫折とみたいな。なんというか心がぎゅっと苦しくなる要素が多くて。もっと豊かになりたくて幸せになりたくて、もがけばもがくほどに、思った未来からは遠ざかっていく切なさ。お金はないけど愛だけはある、二人でいれば幸せだねって思ってたのに、大人になるとそれだけでは生きていけない。
ましてや、急速に発展する国においては誰もが今よりもっといい暮らしができると信じてる。
それはそうとしてこれ、どこまでが実話なんですか?っていう。物語としては楽しめるけど、現実だったらかなりしんどい。っていうか、当時の中国ではこういうことってそこそこあったりしたの?みたいな。冷静になるとなかなかに胸がざわつく。
ありがちっちゃありがちなストーリーでも、映像が美しくて、主人公二人の心模様が丁寧に映し出されるから、物語に没入することができる。過去の会話が別の意味を持って立ち上がってくる伏線は、まるでミュージカルでいうリプライズのように感じてしまい、その悲しみに少し高ぶってしまった。
確かに悲しくて辛い結末なのだけど、沈んだ気持ちで映画館を後にしたかと言えば、そんなことはなく。二人の10年が終わったんだなと。
そんなラストに寄り添うエンドロールもまた良くて、静かな余韻が胸に残った。
帰りの電車でふと思ったこと、徒然に。
この作品の二人は、リュー・チンヤン、リン・イーヤオってお互いにフルネームで呼び合うんですね。私がドラマや映画を見た限りだけど、中国ではフルネームで呼び合うことってかなり多そう。韓国もわりとそのイメージがある。もしも日本の恋人同士がフルネームで呼び合う文化だったら夫婦別姓・同姓の捉え方ってどうなってたんだろうな。
愛しい人の「呼び名」ってそれそのものに愛が詰まってると思うから、氏名が変わるということを一人のことではなくて、二人ごととして共有できる気がする。
だからどうしたという話なんだけど。
日本では恋人に限らず、親しい関係だと、割と下の名前だけで呼び合うことが多いから、本人以外の人間が、苗字が変わったということを実感する瞬間ってなかなかないなって。