MGC
9月15日(日) 東京五輪のマラソン日本代表が決定するマラソングランドチャンピオンシップ(通称MGC)が開催された。
私は陸上競技(中でもマラソン・長距離・駅伝)を応援しており、この大会もとても楽しみにしていた。それでも、”五輪代表が決定する”という世間の注目と比較すると、どこか大きな大会の1つという感じで捉えていた気がする。*1
しかし、大会の前々日に行われた記者会見の様子を見て、「これは‼」となった。
どの選手からも”仕上げてきました”オーラ*2が出ていて、一気に緊張感が高まった。←私の(笑)
知り合いが走る訳でもないのに、前日の夜からそわそわした。
明日で全てが決まる。
私たちファンはレースが始まると沿道やテレビの前から歓声を送ること、それ以外は全ての結果を見届けることしかできない。
マラソンは長丁場である、故に何が起こるかわからない。
だから、小心者の私は、何が起きてもその全てを見届けて応援するんだっていう小さな誓いを立てている。
全ての選手が持てる力を発揮して、走りきってほしい。願うはただそれだけだ‼
いよいよ大会当日、いつもであれば現地観戦するところですが、今回は諸事情により自宅でのテレビ観戦。いんやーーー現地観戦したかったーーーー‼‼‼*3
直前番組を眺めつつ、「相葉ちゃんかっこいいな~」なんて、はやる気持ち気を抑えながら、なんとか心を落ち着かせる。
いよいよ選手たちが入場してきた。
目眩がするほどの緊張感。
今日で決まるんだ。あと2時間後には全てが決まる。
8時50分(ちょっと遅れたけどw)一斉にスタート。
それにしても、スタート直後の最初のコーナーは、箱根駅伝1区のスタート直後の曲がり角を彷彿させる。
箱根ではその最初のカーブを先頭で通過した選手が区間賞を取るなんて言われているが、MGCではさてどうなるか。
最初のカーブを先頭で通過し、スタートから100mもしないうちに先頭に飛び出したのが、設楽悠太である。
先は長いと思いつつ、この強気の飛び出しに、ワクワクが止まらない。
5キロ、10キロ、設楽悠太と2位集団との差は開く一方だ。
中間地点付近でのタイム差は、なんと2分以上にもなる。2分以上の差を逆転するのはなかなか難しい…。
2位集団には早く追いついて欲しい。だけど、設楽悠太には逃げきってほしい…。
相反する感情だが、どちらも本心だった。
25キロを過ぎると設楽悠太のペースが一気に落ちる。
誰もが想定していたこととはいえ、ここからどこまで粘れるか…。
アナウンサーが1キロごとのラップタイムを読み上げる度、ペースが段階的に落ちていることがわかる。これはあまり良くない…。2位集団とはまだまだ離れているが、追いつくかも…。
2位集団には早く追いついて欲しい。だけど、設楽悠太には逃げきってほしい…。
ここでもまた、本気でそう思った。
その頃、2位集団にも変化があった。鈴木健吾が集団を引っ張りペースアップ。
設楽悠太の明らかなペースダウンもあり、2位集団がやたらと元気にみえる。
これは…。追いつくぞ。設楽悠太が急激に復活しない限り、おそらく時間の問題。
2位集団には早く追いついて欲しい。だけど、設楽悠太には逃げきってほしい…。
この場に及んでまた同じことを思った。
37キロ過ぎ、ついに2位集団が設楽悠太に追いつく。
いよいよ、ここからが勝負だ。という気持ちと同時に設楽悠太とその他のペースの差に、「悠太くん大丈夫か…」と心配になる。
できることなら2位集団に吸収されて、(集団で少し休んで)終盤でまた優勝争いをしてもらいたい。
しかし、ぺースが違いすぎる…。
気温が上がっていることもあり、脱水症状とか熱中症でなければいいと思った。
MGCは2位(最低でも3位)以内に入らなければ、五輪代表になれない。だから、極端な話、ハイペースで突っ込んで入り、持たなかったら途中で止めて、また次の大会で日本新記録を狙うという作戦だってある。
だけれども、先頭を走る設楽悠太からは、「一か八かの勝負」ではなく「このやり方で絶対勝つ」という気持ちが見えた。だからこそ、私はワクワクしたのだ。
もう十分。だけど、できることなら最後まで走りきってほしい。祈るような気持ちだった。
そんな思いを残しつつ先頭集団に目を向けると、いよいよ集団は5名に。
40キロ手前、中村匠吾が仕掛ける。
きったーーーー。中村匠吾のロングスパート。40キロ走ってこのキレ。
「よーし、よしよしっ」
「根性あるな」
いつかの箱根駅伝*4、監督車内の駒澤大学・大八木監督の言葉を思い出す。*5
そして、一度は離された大迫傑が中村匠吾に追いつき、服部勇馬がやや遅れる。
「大迫君の上体があんなにぶれているのは見たことないですね」
解説の高岡寿成(元日本記憶保持者)が言う。
言われてみればそうかもしれない。「おおさこぉぉぉ」って思わず声が出た。
ラスト1キロを切り、中村匠吾が再びスパート。
それにしても最後の急な坂を登る3選手(中村、大迫、服部)は凄かった…。
”勝つんだ”という思いが切実で切実で。
その思いがこちらにも伝わってきて、涙が出た。
学生時代、実業団と、それぞれの舞台で必死に走る彼らを見てきた。*6
だけど今回は、必死というよりも執念に近いようなものが伝わってきた。
皆、人生をかけてこの日を迎えたんだ…。そう思った。
そして、ついに勝負が決まる。
中村匠吾 2時間11分28秒
服部勇馬 2時間11分36秒
大迫傑 2時間11分41秒
結果詳細はこちら↓
中村優勝、服部2位で東京五輪内定/男子MGC詳細 - 陸上ライブ速報 : 日刊スポーツ
ちらりと映った駒澤大学・大八木監督の笑顔に、ほろりとしたり、死力を尽くした大迫傑の姿に、その戦いの過酷さを実感したり。
次々とゴールする選手たち。
勝負を盛り上げた鈴木健吾も、 後半ペースダウンをした設楽悠太も帰ってきた。
今井正人はゴール後深々とお辞儀を。
注目された井上大仁もゴール。
…ゴールしてくれてありがとう。
全ての選手に、素晴らしいレースをありがとう。
そして、お疲れ様。
時に応援するチームの一員として、時にライバルチームの一員として、学生時代、実業団とずっとずっと見てきた選手たち。
「あーーーーーもう、皆に勝ってほしいんだ」と無理を承知で言ってしまうほど、全ての選手を心から応援していた。
そんな選手たちが見せてくれた最高の勝負。こんな幸せなことはないなってくらい心が震えた。
最後に、河野ディレクターのこの言葉。
「選手たちの頑張りに、言葉が出ないくらい感謝している。敗れ去ったメンバーに飛躍してほしい。36人のサポートを考えていきたい」とは河野ディレクター。
【すぐそばに東京五輪(8)】白熱のMGC 敗れたランナーにも評価を - スポーツ - SANSPO.COM(サンスポ)
そして、ドーハ世界陸上(男子は10月6日、女子は9月28日)もめっちゃ楽しみになりましたーーーーーー‼*7
*1:長距離マラソン界は涼しくなってからが本格的なシーズンインなのでね^^まだまだまだまだ楽しみは続きますよ~
*2:とにかく絞れていて、日焼けしていた
*3:知り合いからどこで観てるの?ってラインが来たりして、この大会の注目度が伺えた。ごめん、今回は自宅(笑)
*4:第91回箱根駅伝1区、16キロ過ぎで一度先頭集団から遅れるも、不死鳥の如く復活し2段階のロングスパートで勝ち切る中村匠吾。そんな中村に「中村さーん」と元気に呼びかける2区の村山謙太も印象に残っている。なお、この時の2区・区間賞は服部勇馬。
*5:そして、40キロすぎの坂を上り切ったところで、先頭の3選手の奥から見える黄色ユニフォームの大塚祥平に、え、え、え、え、大塚ぁぁぁって大興奮したのはここだけの話
*6:テレビの前や、沿道から