旬感ブログ

好きなこと&旬な気持ちをメモ代わりに

流浪の月

原作を読んだ時は、こんな関係を描けるんだ‼という驚きと同時に、こういう”あり得ない関係”を描くということは、ことの顛末を眺めている読者に理解はできる(共感はできずとも)。ただ、物語の登場人物だたちからしたら、到底納得できないよな~なんて思った。そして、何より小説としてとても面白く読んだことを覚えている。

 

映画自体は150分の大作。長い作品は苦手なので、正直、どうなんだろうって思ったが、俳優陣の熱演もあり、あっという間だった。これ以上長くするのは難しいけど、原作を読んでいる身としては、もっと更紗と文の過去(主に家庭環境)*1がわかるシーンがあるとよかったかな~なんて。

 

普段、原作と映画を比べるような見方はしないのだけども、読後、鑑賞後の印象が似ているようで少し違ってなかなか興味深かった。この作品、不思議なことに、原作も映画も終わった後に、ふと音楽が頭に浮かんだのだ。

 

原作では、浜崎あゆみ『appears』

恋人達は とても幸せそうに

手をつないで歩いているからね

まるで全てのことが 上手く

いってるかのように 見えるよね

真実はふたりしか知らない

おそらく、二人だけの描写が映画よりも多かったのだろう。なんだか、文と更紗の”二人にしかわからない二人だけの世界”。二人の世界に逃げ込むような、二人でいるということに重きが置かれている印象だった。

 

一方、映画を観た後は、中島美嘉『ORION』

泣いたのは僕だった

弱さを見せないことが そう

強い訳じゃないって君が

言っていたからだよ

曲全体のイメージとは違うのだけど、誰もが心で泣いていて、我慢していて、そのことが、『泣いたのは僕だった』というフレーズを想起させたのかな。

驚くほど誰もが幸せじゃなさそうで、つらかった。映像にするとこうも陰湿で、じとっとして、極端な言い方すると二人の共依存ぽさが滲み出る。恐らく、原作では文と更紗を通して世界が描かれているのに対し、映像では、それぞれの登場人物がそれこそリアルに存在しているので、自ずとそうなったのかも。あとは、もう、実力のある俳優さんが皆して死んだ目をして演じているので、食らってしまうっていう。

 

中でも、更紗を演じた広瀬すずさんは、演技力はもちろん、青春映画で見せた瑞々しい笑顔が印象的だったので、こんなに幸せじゃなさそうに笑う姿を見るのがほんとにつらくて。いや、演技なんだけど(笑)それでも、なんかショックで😢早く次回作で元気なすずちゃんが見たいよ‼

そういう意味では、がりっがりかりっかりに痩せてた桃季くんもそう。早く元気な姿が見たい。とまぁ、こちらの心が抉られるほどの熱演で、月並みだけど松坂桃李広瀬すず横浜流星はやっぱりすごい。難しい作品だけどこのメンバーなら絶対いいよねって思ってたら、いやもう予想以上に演じてくれて、スタンディングオベーションです👏

 

映像は綺麗だし、遅ればせながらも映画館で見ることができてよかったな。久しぶりに心がぎゅってなりました。

 


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*1:更紗の最初の家族、パパとママに愛されて夕飯にアイスを食べたり自由に暮らしていた頃。ジャンクフードの一切を与えず、規則正しい生活だけを正とした母に育たられた文。この辺りの描写がはっきりすると、文がピザを食べるシーンや、アイスを夕飯に食べるシーンの意味合いがよりわかるかな~、なんて。それくらい映像で察しなさいってことかもしれないけど。正直、皆わかるの?って思った(笑)

帰らない日曜日

エンドロールが終わると、水筒の水を一口飲んだ。普段、映画を観る時は、ちょこちょこ水分補給をするのに、この作品では最後まで一切水を飲まなかった。それほどまでに集中して観ていたのか?夢中になっていたのか?と言われると、正直よくわからない。けれども、先の展開をあれこれ想像しながら少し緊張感を持って観ていたことに間違いない。

 

第1次世界大戦後のイギリスを舞台に、名家の子息と孤独なメイドの秘密の恋を描いたラブストーリーという、あらすじは頭に入っていたものの、“それだけ”ではないでしょ、まだ何かが起きるという予感が画面からびしばし。それは、あまりにも美しい映像がそうさせたのか、印象的な音楽がそうさせたのか、効果的なカメラワークがそうさせたのか。「この後何が起こるのだろう」ということばかりが気になっていた。

でも、最後まで見ると私自身が過度にスリルを感じていたことに気づく。そういった過剰な期待は、それが裏切られると、「なんだ、思ったより平凡だったな」と肩透かしを食らったような気持ちになるのだけども。この作品は、そうはならなかった。

それどころか、全てがつながった瞬間そういうことか‼いい意味で期待が裏切られた喜びで満たされた。

 

いくつか印象的なシーン、好きなシーンがあり、それぞれに言及したい。のですが、シーンによっては、ネタバレにもつながるので、まだ未見の方は、この先ご注意ください。

 

まずは、全体的なもの。

事前情報なしで観たので、鑑賞後、え?R15だったの?と驚いた(基準とかわからないけど、露出度合い的にR18かと)。確かに、ヌードシーンは多いものの、そこにイヤラシさがあるかというと、必ずしもそうではなく。美しい部屋・景色の中に一糸纏わぬ姿で人間が佇むと、それはもうほぼ絵画なんだな。つまり、それらをそう見せるオデッサ・ヤングとジョシュ・オコナーの二人が素晴らしかったのだと思う。

特に、主人公のジェーンが、秘密の恋人であるシェリンガム家の子息ポールと彼の寝室でひと時を過ごし、その姿のまま、誰もいなくなった広大なアプリィ邸の中を、気の向くままに散策するところ。物語のポイントなので、結構長いシーンなのですが、どう言葉に表せばよいのだろうか。昼下がりの窓から差し込む光、豪華な本棚や調度品、ジェーンの姿や表情……。はぁ美しいな……。でも秘密を覗き見ているような、不思議な感覚。

他にも第一次世界大戦後、1924年当時の上流階級の人々の暮らし、イギリスの景色そのものが時に水彩画のように、時に油絵のように映る。

 

eiga.com

ここからは、完全にネタバレ。

 

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中村屋酒店の兄弟

いい意味で予想を裏切る展開、聞いてない。とても良くてびっくりした……‼

映画館で観たのですが、本編上映前にラジオドラマが流れる。これが、天才的によかった。劇場内は暗転し、真っ暗なスクリーンを前に音に耳を澄ませる。音だけでこれだけ映像が浮かぶんだな。料理シーンなんて匂いまで感じた。なんて贅沢な時間だろう。このラジオドラマでかつての中村家の日常を垣間見ることになるので、いざ、その後の本編を見ると、それらがより伝わるとうになっている。なんという相乗効果。

 

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数年前に家を出てひとり東京で暮らす和馬は、親が経営していた酒店を継いだ兄の弘文のもとへ帰ってくる。数年ぶりに訪れる実家は当時のままの温かさと懐かしさに包まれていたが、その一方で確実に変わってしまったものもあり……。

中村屋酒店の兄弟 : 作品情報 - 映画.com

 

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予告編の印象通りに物語が進むのだけど、それだけじゃない……んだな~。ラジオドラマに続き、本編が進む中、こちらの気持ちも中村屋酒店の空気、兄弟の空気に馴染んできたところで、あーーーっ。別に、その何かが問題なんじゃなくて。それまでに、兄の気持ちも、弟の気持ちも、家族の雰囲気もいっぱいいっぱい感じてたから、うわぁぁぁって心が動揺してしまう。45分という短い時間にこんなに詰め込めるんだ。

 

兄ちゃんの心根が優しくて、そんな兄を「兄ちゃん」「兄ちゃん」って慕う弟がとびっきりかわいくて愛おしくて。言いたい言葉が、喉元どころか口元まで来ているのに、それを飲み込んで(特に兄ちゃん)。でも、互いにすごくすごく心配してて、思ってて。いや~なんかね~……よかった、ほんと。

 

中でも、美しくて、苦しくて、優しいラストシーンは、必見。ラストシーンでも、この兄弟は悉く、直接的な言葉を言わない、言えない(相変わらず特に兄ちゃん)。けど、精いっぱいに伝えようとする姿。あの、「またいつでも帰ってきていいからな」*1にどれほどの思いを込めたんだろうか。決して明るい終わり方ではないのだけど、ここにきて兄弟二人の気持ちが言葉を超えてばちっと伝わるという意味では、とても希望的。ほんとに偶然なのですが、先日こちら*2で感想を書いた同じ藤原季節さんが出演しているスペシャルドラマ「海の見える理髪店」のラストにもシンクロするような余韻があった。しかも、ここでも季節くんは、つーって綺麗な涙を流すもんだから、それが美しくて、尊くて。心の中で思わず合掌。

 

 

映画館を出て、そのまま実家に帰ると季節にそぐわない上下フリース素材のパジャマを着た母と季節に合わせたリネンのパジャマを着た父が迎えてくれた(笑)このツッコミどころ満載なのに、意に介さず、各々が超マイペースに平和に暮らしている感じ。あぁこれが私の実家だ。そして、実家から駅に向かう道すがら、中村屋酒店のような酒屋さんがあって、なんかぐっと来て泣きそうになってしまった。

 

撮影で使用したリアル中村屋酒店のドキュメンタリー(白磯大知監督)もあります。

 

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*1:

記憶曖昧ですがこういうニュアンスのセリフ

*2:

 

syunkanmkrn.hatenablog.com

 

劇場版 おいしい給食 卒業

あーーーお腹空いたぁぁぁ‼‼‼

 

ドラマは放映時に何度か見た程度なのですが、映画の評判が良いので、近所の映画館にて鑑賞。

甘利田先生を演じた市原隼人さんのコメディーセンス、明らかに普通ではない動きをしているのに、なぜか汚くならず、かつ品良く美味しそうに食事ができる技術は、確実に天才。鑑賞後、思わずインタビュー動画を見ていたら、動きはあんなにコメディーなのに、それはもう愚直に甘利田先生に向き合ってて、“漢”を感じた。あと生徒の神野ゴウ役の佐藤大志くんの話になった時の愛情深い表情。今更ながら、凄い役者さんだなと実感しました。いや、完全に同世代なので、あの不器用でやんちゃなイメージのあったイッチーが、気づけばとんでもなく立派になられてた、みたいな衝撃と感動。

 

話が少し逸れてしまったけど、おいしそうな給食を見て、溢れんばかり、いや、溢れすぎて洪水状態の給食愛を浴びて、笑って、先生と神野くんとの関係にほろっとして。そして、何より自分が給食を食べていた頃を懐かしんで。最後の給食シーンでのおかわりジャンケンのシーンなんて、それだけで懐かしさで泣けた(笑)

なんか、年を取ったんだろうな。給食の思い出が走馬灯のように思い出され、地元の友達の顔が浮かんできた。不思議なことに、給食で思い出すことってなんで楽しいものばかりなのだろう。給食の時間になると机をくっつけてグループ作って、人気の食べ物があれば、ジャンケン大会して、おかわりして。今思うと、ほんときったねー話なんだけど、笑いすぎて牛乳噴き出して皆で怒られてた記憶とか。なんか超バカ(笑)あーーー皆元気かな、会いたいな。

 


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家族送

スケジュールがビタっと嵌り、《MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)》という短編映画作品集を鑑賞しました。

MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)》はクリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクトです。年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した、自由で新しい映画製作に挑戦します。“変化”をテーマとした36名の監督による短編映画を4シーズンに渡りオムニバス形式で公開。初監督多数、俳優、漫画家、ミュージシャンらが参加し、一般公募枠の12作品は、419作品の応募から選抜されました。映画祭の開催ほか、多様な作品を多様な形で国内外に届けていきます。

ABOUT | 短編映画制作プロジェクト | MIRRORLIAR FILMS

今回鑑賞したMIRRORLIAR FILMS Season3は全部で9作品。その中で最も衝撃的かつ私の好みだったのがこの作品。

あらすじは、

亡くなった祖⺟の葬儀を全て⾃分たちで⾏いたいと⾔い出した⽗親。彼の⼀⾔をきっかけに家族は⼀丸となって奔⾛することとなる。俳優として活躍する村岡哲⾄の実体験に基づいた⼀⾵変わったドキュメンタリードラマ。

短編映画制作プロジェクト | MIRRORLIAR FILMS

というもの。

 

あらすじそのまんまの作品で、リアルな家族が、自宅(監督の実家)を舞台に、おそらくスマホのカメラで撮影した、プライベート感溢れる作品。一見するとただのホームビデオなんだけど、ドキュメンタリーといいつつ、演技もしていたりして。もちろん、編集もしっかり。映画史に残るような大作・傑作ではないかもしれないけど、この村岡家にとっては、そりゃもう珠玉の名作。家族皆でこんな作品が作れたら幸せすぎるでしょ。きっとお亡くなりになったおばあ様も喜んでるはず‼何がいいって、画面を通して、家族の皆がこの映画作り&葬儀作りに前向きノリノリに取り組む姿勢が溢れていること。その様子に思わず頬が緩んでしまう。芸術一家ということも影響しているのかな、ユーモアセンスにも溢れ、この作品を観終わる頃には、表現村岡家が大好きになってしまった。

 

葬式というのは不思議なもので、悲しいし寂しいのだけど、いったんそのことを心の片隅に置いて、家族総出でやたらとバタバタする。なんでこんなにばたつくのか自分たちでもよくわからない。その一切を業者には任せず、自分たちで執り行うというのだから、そちゃもう想像以上に大変だったろう。でも、なんだか、楽しそう。最終的に、読経とか歌唱(別れの歌みたいな?)も自分たちで執り行うのだけど、なんかもう、笑ってはいけない状態で(笑)いや~よかった^^

そういう感覚って私にも身に覚えがある。同居していた祖母が亡くなった時、家族皆して弔う気持ちはめっちゃあるんだけど、各々にそれに溢れすぎてしまって(笑)出棺の時は、小学校の教師をしていたおばあちゃんに敬意を込めて、卒業式で流れる「威風堂々」を流してみたり。ちょいちょい笑ってしまいそうで、でも真剣で(笑)真面目にやっているのだけど、だからこそ、なんだか妙におかしくて。そういう家族のあったかさ、可笑しさがこの15分間に詰まってた。そりゃもう最高の作品でした。

 

YouTubeでも見ることができます~^^

 

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