旬感ブログ

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スペシャルドラマ「海の見える理髪店」

自宅に録画機器もなく、また最近は、どうも途中で挟み込まれるCMに耐えられなくなってきてしまい、ドラマを見ることがめっきり減っていたのですが、この作品とっても好みでした。

静かで映像が綺麗で淡々と物語が進んでくように見えて、柄本明さん演じる理髪店店主の隠された過去にちょっぴりドキドキして。

 

公式HPの紹介文

>老店主の70年分の回想が織りなす奇妙なサスペンスから目が離せないまま、急転直下のラストでささやかな日常の謎が解けていく!

スペシャルドラマ「海の見える理髪店」 - NHK

に対しては、いやいやいや”サスペンスから目が離せないまま、急転直下のラストでささやかな日常の謎が解けていく!”ではないだろう、とつっこみつつ、柄本明さんが演じるだけで秘密の過去も壮大なサスペンスになるのはちょっとわかる(笑)

 

この作品、出演者である藤原季節さんのTwitterを拝見し、視聴することにしました。そこには、「ぜひ部屋を暗くして少し大きめの音でお楽しみください。」とあったので素直にそうして、テレビをみました。

 

何がそんなに好みだったのかというと、一言でいえばうるさくないことがとても心地良かった。基本的に柄本明さん演じる海辺の小さな理髪店の老店主と藤原季節さん演じるそこを訪れる若者の交流が描かれる。交流と言っても、理髪店で店主が若者の髪を切る様子を映し、その中で理髪師と客という立場で会話を重ねるだけだ。それ以外の登場人物は、すべて店主の回想シーンでのみ登場する。地味といえば地味なのだが、その出演者の確かさ故か、そんな時間の使い方がとても贅沢に感じた。

 

店主の最初の妻を演じた玄理さん、若かりし頃の店主を演じた尾上寛之さん、店主の母親を演じた片岡礼子さん、店主の店で働く理髪師を演じた眞島秀和さん、そんな贅沢な起用の仕方ある?という抑えた演技でとても良かったし、近頃、邦画でちょくちょくお見掛けする中島歩さんが昭和の映画スターとして登場するくだりや、コメディーのイメージも強い水野美紀さんが気丈な女性(店主の2番目の妻)を演じているのも、最高でした。こうして書いていて気付いたけれど、誰も名前がついていないんだな。

 

そして、クライマックスは公式HPの触れ込みにもある急転直下のラスト。詳細は、ネタバレになってしまうので名言は避けますが(とは言っても核心部分に少し触れますので、これからご覧になる方はご注意願います‼)、店主と青年の関係がぶわっと浮彫になる場面。セリフの数は少ないし、相変わらず静かなのだけど、それが、もうぐっときた。

 

言葉にして伝えること、あえて声には出さない言葉の美学。リアルな生活では、ちゃんと言葉にしないと伝わらないよ、と思っていても、フィクションの世界、ドラマの世界では、映像でわかることも多いせいか、言葉にしないこと、声に出さないことで伝わる情報の方がむしろ多く、美しく感じる。

 

そして、あの場面で泣かないのが柄本明だし、その一方で、ほんとに綺麗な涙を流すのが藤原季節だよね、わかるーーー、みたいな……。なんか一周回って(私は)爽快でした。少しだけ泣きそうになりながら、ふぁぁぁーーーいいドラマだったーーーと余韻に浸っていると、すぐに次の番組が始まり、おっと、これはドラマだった……。と現実に戻ったのでした。

 

はぁ素敵なひと時だったな、月曜日から珍しくささやかな幸せ^^

そして、思わず原作(作:荻原浩)をポチってしまいました。