世界の果ての通学路
思わず“はぁぁ…”とため息が出てしまうほど、良かった。
とても良いドキュメンタリー映画、もといアドベンチャー映画。
鑑賞前に、口コミを少し見たら、ただのドキュメンタリーだった的なコメントも意外と多くて、そこまで期待していなかったのですが、個人的には大正解でした‼
“ただのドキュメンタリー”と評する気持ちもわかる。
この映画、通学する様子をひたすら映しているだけとも言えるから(笑)
小さなハプニングはあるけれども、劇的なアクシデントも起こらない。
でも、私にとってはこの映画、完全にアドベンチャー映画でした。
だって、通学路だいたいこんな感じですよ‼
ジャクソン(ケニア):学校まで片道15キロ 2時間 (象*1の群れに注意しながら、妹とほぼずっと小走り)
ザヒラ(モロッコ):学校まで片道22キロ 4時間(ほぼずっと崖みたいな山道を徒歩で。鶏を抱えながら)
カルロス(アルゼンチン):学校まで片道18キロ 1時間30分 (草原と山道。妹と共に馬に乗って。)
サミュエル(インド):学校まで片道4キロ 1時間15分(田舎の畦道。ただし、車いす*2を弟2人が押しながら)
これ文字にするより、実際に見た方が道の険しさというか、やばさみたいなものが、伝わると思う。
もう何がすごいって、まさに道なき道、地平線の彼方まで人間なんて自分たち以外誰もいない…
そんな所を小さな子供たちが兄妹、友達と助け合って、ひたすら学校を目指して進んでいく。
トラブルもあるのだけれども、彼らは進むしかない。
途中で休憩したり、自分たちで問題を解決しながら、ただただ学校を目指す。
………これ、私のような甘っちょろい生活をしている人間からしたら、もはやフィクションの世界で、現実とは思えなかった。
とにかく景色が壮大で、それだけで映画にする価値は十分にあると思う。
正直、下手な映画のロケよりもずっと素晴らしい景色に出会えます‼
印象に残ったこと…
・ちょいちょい誘拐とか大丈夫なの!?って本気で心配になる。
特に、モロッコの女の子たちが、足が痛くて、ヒッチハイクをする場面とか。
そのままどこかに連れ去られてしまうんじゃ…とめっちゃどきどきした。
結果、大丈夫なのだけれども、命懸けの登校ってこういった側面も絶対にあるはず。
ちなみに、このドキュメンタリーではそういった危険には一切触れてない。
・誘拐心配とか言いつつ、優しい大人もちゃんと出てくる。
・子供たち、漏れなく聡明。
自分の立場や、周りの環境を驚くほど理解していて、その上で叶えたい夢がある。
そして、それを伝えるだけの言葉を持っている。賢いというより、聡明。正直、敵わないなと思った。
・学校に行く前に、制服の襟を整えたり、身だしなみに気を配る場面、すごくいい‼
彼らにとってそこ(学校)が特別な場所なんだっていうことが自然と伝わってくる良い場面。
・家族愛。
子供たちの両親の多くは、学校に通ってなさそうだった。それでも日々の生活をしながら、子供たちを学校に通わせているのが、本当に立派で(涙)*3
特に印象的なのは、インドの3兄弟。障害を持つ兄を車いすに乗せて、学校に通う。通学の場面だけでなく、母親が子供たちを見送る場面とか、泣きそうになった。
また、このお兄ちゃんが、いいこと言うんだ。最後のインタビューシーンは、必見。*4
・この映画では触れてないけど、この子達、学校が終わったら、来た道を帰るんだよなと思うと、それはもう果てしない気持ちになる…。
こういう映画を観ると、どうしても自分とか、日本のある種恵まれた環境とかについて、比較してしまいがちだけど、単純に比較することもできないと思う。
彼らは、学校で勉強することである意味、将来の保証がされている部分もあって…。もちろん、勉強をして道を開くんだという強い意志があることが前提だけども。つまり、彼らの周りには、それだけ学校に通えない子供たちがたくさんいるということの裏返しでもある。
日本などの場合は、「学校に通ったことそのもの」が、価値として評価されるわけではないので、どうしても、モチベーションが違うのかな~とも、ぼんやり思う。
それでも、純粋に、学ぶこと、勉強すること、友達と交流することって、胸がときめくものだったなと思わせてくれるほど、子供たちがきらきらしていたし、学校ていいなって素直に思えた。
万人受けはしないかもしれないけれど、たくさんの人に観てほしい‼