旬感ブログ

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ジョン・F・ドノヴァンの死と生

映画の中に没入したりふと我に返ったり…映画全体の温度がなんだかとても心地良かった。

グザヴィエ・ドラン監督については、詳しくないですが、なんとなくおしゃれなイメージがありました。

おしゃれ系映画はそこまで得意分野ではなかったので、ここまで心地よく鑑賞できたことに、正直、自分が一番驚きました。

 

何がそんなに心地よかったのか?と聞かれるとうまく答えられない。

美しい映像と音楽、心象描写…一つ一つのシーンが丁寧で、ストーリー全体というより、目の前のシーンにただただ入り込めたというか…。

 

中でも、ジョン・F・ドノヴァンと文通をする少年ルパート・ターナーが、子供の頃の自分と同じような思考をしていて、あー私もそうだったな~って。

共感とかではなくて、ただただ、わかるわかる~となるので、ストレスなく観れたのだと思う。

特に、印象に残ったのは、母親との口論シーン。

私も、ルパートと同年齢の頃そうだった。

子供なりに自分の中で考えて、

「これを母親に直接言ってしまったら、母は絶対に傷つくだろう。なぜなら、それは、(私から見るに)多分事実だけど、本人も気づいてないような少し残酷なことだったり、コンプレックスだったり、本人も目を逸らしてきたであろうことだったりすると思ったから。だからこそ、何があっても、そのことだけは母親に直接言わないようにしよう。」

そう決めて、誰にも言わずに頑張って、頑張ってきたのに、結局、怒られたり、口論したりすると、最後には全て吐き出してしまうのだ。それも、母親を傷つけるような直接的な表現で。

「それは、全部お母さんのことでしょ?私のじゃなくて、お母さんのことだよ」って。

ルパートと同じように泣きながら思っていたことを一気に言い放った。

あー言ってしまった…。

そんな時、私は、母の顔を見ることができなかった。だから、当時、母親がどんな表情をしていたのか知らない。だけど、「そうかもね、ごめんね」って小さな声で言われたような気がする。なんだか思い出すだけで胸が苦しい。ルパートと同じで、お母さんのこと大好きだよって言いたいのに…。

こうやって、思い出しながら、文字にするとなかなかエモーショナルになりますが、映画を観ている時は、そうそう、私もそうだったーって普通に見ていた。

割と自分一人でなんでも解決しようとして、どんどん行動するところもルパートに似ていたと思う。

 

こういう時って、まるで自分を見ているようで…感動とか、涙が出た、とかありそうなものだけれども、一切そういうことはなくて。ただただそのシーンをシンプルに理解できたということが、ノンストレスで心地よかったのだと思う。しかも、とてもきれいな映像で、とてもきれいな親子がそんなやり取りをするので。

 

それ以外にも、どのシーンもつっかかるようなものを感じることがなくて…。監督がイメージをそのまま伝えることに長けているのか、とにかく私にはすーっと入ってきた。正直、ここまで矛盾なくすーっと入ってくることってあまりないので、驚きました。

さらに言うと、人の愛情をどんなことで感じるか…みたいなポイントも映画を通してすごく、似ているような気がして、これはもう、グザヴィエ・ドラン監督の作品をもっと見てみようと。

この作品がたまたまのそうだったような気もするし、だけど、普遍的なものでもある気もするし…。やっぱり、もう少し見てみたいな!!うん。

ストーリーどうこうというより、私にとっては、最高のグザヴィエ・ドラン監督入門編となりました。

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