旬感ブログ

好きなこと&旬な気持ちをメモ代わりに

最後の決闘裁判

しばらく放心状態のまま、エンドロールを迎えた。

緊張感から解放されて一気に放心したというか、ふあぁぁー……みたいな、身体の力が一気に抜けて、ぼーっとしてしまいました。これが重厚感なのかな、150分超えの長尺も一切だれることなく、それどころか集中力切らさずのめり込んで観た。

個人的に、同じシーンをいろんな人の視点から語る系の物語って、話の展開が進まなくて、退屈になりがちなのですが、そういったこともなく。なんなんだろう、ストーリーうんぬんよりも映画としてのクオリティー、熟成度のようなものに、圧倒されたのだと思う。画面の色彩が美術館に展示されている絵画そのもので、知らない時代の知らない国の話なのに、見たことあるぞという不思議な感覚がした。

 

もちろん、ストーリーも良かったの。気持ちの良い話ではないけど、各々の視点で見ると同じ出来事も観方、感じ方は全く違うし、うむ、うむとなる。自分が女性だからかもしれないけど、私は被害者女性の視点よりも男性視点の方がずっと面白く興味深かった。この映画、男性陣は基本的になんかずっと戦ってる。それこそ命懸けて。

でも、考えてみると、数百年前まではこうやって男性がTHE肉弾戦の戦争をいつもしていて(またその描写が容赦なくてほんとに痛そうだった)。きっと彼らは「俺たちは命がけで戦っているんだ、君たちを守るために」という理由を盾に、女性(もちろん女性だけでなく土地も家畜も)を所有してきたのだと思う。

よくナショナルジオグラフィックチャンネルで発情期のオス同士が戦い、命を落とすなんてことがあるけど、この映画の男たちは女性を争って戦っている訳でもない。その姿はどこか滑稽にも見えたけど、この時代においては、たぶん“命懸けで戦っている”という状態そのものが重要だったのだろう。そうやって、所有する土地や女性を守り抜く姿こそが、支配力を強める。なんか、社会全体のパワーバランスに今よりもずっとずっと納得感があった。

こうやって数百年かけて積み重ねられてきた社会の力学の上にまさに“今”があるんだな。結局、今も残る男女間の不均衡な差って、こうやって積み重なってきた既得権みたいなものよね。残念ながら、だからこそ簡単に崩れない……。そんなことずっと前から分かりきっていたけど改めて、立ち上がって見えたというか。

ただそれは、鑑賞後少し時間をおいて、こうして感想書いている中で思ったことであって、鑑賞中は、映画の世界に身をゆだねて、心を頭と心をかき乱されてました。

 

演出や“絵”の力もすごかったけど、役者さんの演技も素晴らしかった。演出かもしれないけど、皆、目(視線?まなざし?)が絶妙。特にマルグリット役のジョディ・カマーの決闘場を後にする際の”目”には震えました。彼女がマルグリットという役を体現れすばするほどその痛みがどんどん伝わってきて、しんどかった、苦しかった。

アダムドライバーもよかったな~しみじみ。アダムドライバーって好きな役者さんなのだけど、なんか見終わるとしみじみしちゃうの、なんでだろう(笑)好きってことなんだろうな^^

緊急事態宣言明け、レイトショーはやはりいい。そこで観た映画が素晴らしければまた更にいい。はぁ幸せ。

eiga.com

f:id:mkrnsouko:20211019152822j:image